コラム 40: おいしい仕事とおいしくない仕事
翻訳の料金は基本的に文字数、単語数をベースとしています。日本語の場合は 1 文字いくら、英語の場合は 1 単語いくらといった具合です。この文字数、単語数の計算は、以前は成果物(出来上がった訳文)ベースで行わることが多かったたのですが、最近は原文ベースが採用されることが多くなっています。英語とドイツ語など、欧州言語間の翻訳で採用されていた原文ベースの料金設定が、外資系企業の要請によって英日翻訳、日英翻訳にも適用されるようになったためだと思われます。
成果物ベースの欠点としては、翻訳作業が完了するまで、正確な金額がわからないという点が挙げられます。ソースクライアントからすれば、納品されるまで正確な金額がわからないのは好ましいことではないでしょう。もう 1 つの欠点は、下手な翻訳のほうが料金が高くなるという点です。これは、意味や内容が変わらないのであれば、(翻訳に限らず)文章というものは短ければ短いほどよいという原則に反することになります。翻訳者の中には、少しでも料金を高くしようとして、いたずらに訳文を長くするような人もいます。このような理由から、私は原文ベースのほうが理にかなっていると思います。
前置きが長くなってしまいました。原文ベースであれ、成果物(出来上がり)ベースであれ、翻訳の料金は分量ベースです。しかし、1 文字あたり、1 単語あたりの料金、つまり単価は、原文の難易度によって変わることはほとんどありません(翻訳の分野によって単価が変わることはあります)。当然ながら、難しいものは時間当たりに処理できる量が少なくなり、簡単なものは多くの分量を処理できます。したがって、内容が簡単で手間があまりかからない案件の場合、時間あたりの稼ぎが大きい、おいしい仕事になります。逆に、内容が難しく、調べものなどに時間を要する案件は、時間あたりの処理量が少なくなり、おいしくない仕事ということになります。
私の場合、翻訳料金を時間給換算すると、1 時間あたり平均 3,000 〜 4,000 円くらいでしょうか。おいしい仕事の代表例としては、ソフトウェアなどのマニュアルの翻訳が挙げられます。繰り返しが多く、かなりの部分をコピー & ペーストで処理できるものなどは、1 時間あたり 10,000 円を超える場合もあります。逆に、おいしくない仕事は、非英語ネイティブが書いた意味不明な英文、日本の技術者が書いた理論的におかしい日本語原稿、固有名詞が多く調査に時間がかかるもの、一般的には通じない、その会社や組織でしか使われないような用語や言い回しが頻出する原稿などです。これまでで、もっともおいしくなかった仕事は、時間給換算して 600 円台のものだったと思います。さすがに、時間給換算して 1,000 円を切るような仕事は、もう二度としたくないと思ってしまいます。
これまでに最高においしかった仕事は、6 カ月間の専属契約による仕事でした。かなり儲かっている会社らしく、金に糸目はつけないという姿勢でプロジェクトに取り組んでいました。常に同じ翻訳者に訳してもらいたいという意向に基づいて、半年間そのクライアントの仕事を専属的に請け負うというものでした。具体的には、仕事があろがなかろうが、毎月一定の金額(45 万円)を保証するというものでした。しかも、1 カ月の作業時間の上限は 100 時間に定められており、100 時間を越えた場合は、別途追加料金が支払われるという契約でした。
実際には、契約期間の 6 カ月の間に、1 カ月あたりの作業時間が 100 時間を越えたことは一度もなく、後半の 3 カ月にいたっては、作業時間は 0 時間でした。つまり、後半 3 カ月の 1 時間あたりの賃金は無限大になり、これ以上ないおいしい仕事となりました。今後、これを超えるようなおいしい仕事はおそらくないと思います。
カテゴリー: 6. 翻訳全般
<< コラム39 へ | 記事一覧 | コラム#31 - 40 の概要へ | コラム 41 へ >>
成果物ベースの欠点としては、翻訳作業が完了するまで、正確な金額がわからないという点が挙げられます。ソースクライアントからすれば、納品されるまで正確な金額がわからないのは好ましいことではないでしょう。もう 1 つの欠点は、下手な翻訳のほうが料金が高くなるという点です。これは、意味や内容が変わらないのであれば、(翻訳に限らず)文章というものは短ければ短いほどよいという原則に反することになります。翻訳者の中には、少しでも料金を高くしようとして、いたずらに訳文を長くするような人もいます。このような理由から、私は原文ベースのほうが理にかなっていると思います。
前置きが長くなってしまいました。原文ベースであれ、成果物(出来上がり)ベースであれ、翻訳の料金は分量ベースです。しかし、1 文字あたり、1 単語あたりの料金、つまり単価は、原文の難易度によって変わることはほとんどありません(翻訳の分野によって単価が変わることはあります)。当然ながら、難しいものは時間当たりに処理できる量が少なくなり、簡単なものは多くの分量を処理できます。したがって、内容が簡単で手間があまりかからない案件の場合、時間あたりの稼ぎが大きい、おいしい仕事になります。逆に、内容が難しく、調べものなどに時間を要する案件は、時間あたりの処理量が少なくなり、おいしくない仕事ということになります。
私の場合、翻訳料金を時間給換算すると、1 時間あたり平均 3,000 〜 4,000 円くらいでしょうか。おいしい仕事の代表例としては、ソフトウェアなどのマニュアルの翻訳が挙げられます。繰り返しが多く、かなりの部分をコピー & ペーストで処理できるものなどは、1 時間あたり 10,000 円を超える場合もあります。逆に、おいしくない仕事は、非英語ネイティブが書いた意味不明な英文、日本の技術者が書いた理論的におかしい日本語原稿、固有名詞が多く調査に時間がかかるもの、一般的には通じない、その会社や組織でしか使われないような用語や言い回しが頻出する原稿などです。これまでで、もっともおいしくなかった仕事は、時間給換算して 600 円台のものだったと思います。さすがに、時間給換算して 1,000 円を切るような仕事は、もう二度としたくないと思ってしまいます。
これまでに最高においしかった仕事は、6 カ月間の専属契約による仕事でした。かなり儲かっている会社らしく、金に糸目はつけないという姿勢でプロジェクトに取り組んでいました。常に同じ翻訳者に訳してもらいたいという意向に基づいて、半年間そのクライアントの仕事を専属的に請け負うというものでした。具体的には、仕事があろがなかろうが、毎月一定の金額(45 万円)を保証するというものでした。しかも、1 カ月の作業時間の上限は 100 時間に定められており、100 時間を越えた場合は、別途追加料金が支払われるという契約でした。
実際には、契約期間の 6 カ月の間に、1 カ月あたりの作業時間が 100 時間を越えたことは一度もなく、後半の 3 カ月にいたっては、作業時間は 0 時間でした。つまり、後半 3 カ月の 1 時間あたりの賃金は無限大になり、これ以上ないおいしい仕事となりました。今後、これを超えるようなおいしい仕事はおそらくないと思います。
カテゴリー: 6. 翻訳全般
関連記事
Copyright © Kunishiro. All Rights Reserved. テンプレート by ネットマニア