コラム 34: こんな日本語原稿が困ります(段落とパラグラフについて)
私は英日翻訳と日英翻訳のどちらも行っています。どちらにもそれぞれの難しさがあり、一概にどちらのほうが難しいとは言えません。
日英翻訳において出来上がりの品質に最も大きな影響を与える要素は何でしょうか。内容の難易度でしょうか。もちろん内容が難しいかどうかも翻訳の品質に影響を与えますが、それよりも重要な要素は原稿の質です。論理的にわかりやすく明確に書かれている質の高い原稿であれば、多少内容が難しくてもそれほど翻訳しにくいということはありません。
私がいやだと思うのは、複数の意味に解釈できる文、理論の流れがめちゃくちゃな文、読み手のことを考えていない不親切な文、何が言いたいのかよくわからない文などで構成された文章です。3 行にも 4 行にも渡って延々と続く文で構成された文章も好きではありません。たとえ内容が難しくなくても原稿の質が低いと大きなストレスを感じます。
質が低い原稿に共通する特徴は、段落意識の欠如です。これは内容のわかりやすさや明確さ以前の問題です。文章というものは、英語においても日本語においても、段落やパラグラフというものを基盤としています。段落もパラグラフも、まとまった内容を持つ文が集まったものですが、英語のネイティブスピーカーは必ずパラグラフ(日本語の段落に相当)をベースに文章を書きます。これに対して、日本人が書く文章には、段落という概念が欠落しています。日本語から英語への翻訳以前に、段落という概念がない文章を、パラグラフを基盤とした文章に変換しなければならいわけですから、本当に一苦労します。
段落を意識していない文章では、1 つの文が終わるごとに改行が行われます。もちろん、場合によっては、1 つの文が 1 つの段落を形成するということもあります。しかし、たとえそれがマニュアルであっても、意味の上での切れ目になっていないかぎり、改行しないほうがわかりやすく読みやすいと思います。
一文ごとに改行されている文章はそれほど珍しいものでもないので、ある程度大目に見て、仕方がないとあきらめています。しかし、たとえ文が終わっていなくても、行末に必ず改行を入れる人もいます。これが最悪のケースです。
ブログなどでも多くの人が、行末改行方式の文章を書いています。ひどい人は、文末に改行を入れた上に、さらに 1 行を空けて次の行に移っています。たとえば、こんな具合です。
閑話休題。さらに、困るのが行末に改行を入れた上に、次の行の先頭に空白を入れて字下げしている人です(字下げはインデントで行ってください)。日本語を英語に訳した場合、1 行の長さが同じになるなんてことはありえません。したがって、レイアウトが崩れ、翻訳者がインデントまで設定することになります。
このような現象が起こるのは、文章を書くことに慣れていない技術者が原稿を書いているケースが多いという理由も多少はあるのかもしれません。今後は段落に基づいた文章を書くことを学校でもっと教えるべきだと思います。日本人ならほとんどの人が九九を言えるように、文章を書くときは段落に分けて書くということが常識になる日が来ることを切望します。
原稿の質という観点からは少しずれるかもしれませんが、もう 1 つ嫌いな原稿のタイプがあります。それは Excel を使った原稿です。Excel での翻訳上書き作業はとてもやりくく、作業効率もきわめて悪いため、私は Word にコピーして Word 上で翻訳作業行うことにしています。そして、最後に完成した訳文を Excel にコピーし直しています。とても手間がかかる作業です。
原稿作成者にお願いです。Excel でなければならない原稿であれば仕方ないと思いますが、Excel を単なる表として使いただけなのであれば、ぜひ Word で表を作成しください。そのようにしていただけると大変うれしく思う翻訳者は私だけではないはずです。
カテゴリー: 6. 翻訳全般
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日英翻訳において出来上がりの品質に最も大きな影響を与える要素は何でしょうか。内容の難易度でしょうか。もちろん内容が難しいかどうかも翻訳の品質に影響を与えますが、それよりも重要な要素は原稿の質です。論理的にわかりやすく明確に書かれている質の高い原稿であれば、多少内容が難しくてもそれほど翻訳しにくいということはありません。
私がいやだと思うのは、複数の意味に解釈できる文、理論の流れがめちゃくちゃな文、読み手のことを考えていない不親切な文、何が言いたいのかよくわからない文などで構成された文章です。3 行にも 4 行にも渡って延々と続く文で構成された文章も好きではありません。たとえ内容が難しくなくても原稿の質が低いと大きなストレスを感じます。
質が低い原稿に共通する特徴は、段落意識の欠如です。これは内容のわかりやすさや明確さ以前の問題です。文章というものは、英語においても日本語においても、段落やパラグラフというものを基盤としています。段落もパラグラフも、まとまった内容を持つ文が集まったものですが、英語のネイティブスピーカーは必ずパラグラフ(日本語の段落に相当)をベースに文章を書きます。これに対して、日本人が書く文章には、段落という概念が欠落しています。日本語から英語への翻訳以前に、段落という概念がない文章を、パラグラフを基盤とした文章に変換しなければならいわけですから、本当に一苦労します。
段落を意識していない文章では、1 つの文が終わるごとに改行が行われます。もちろん、場合によっては、1 つの文が 1 つの段落を形成するということもあります。しかし、たとえそれがマニュアルであっても、意味の上での切れ目になっていないかぎり、改行しないほうがわかりやすく読みやすいと思います。
一文ごとに改行されている文章はそれほど珍しいものでもないので、ある程度大目に見て、仕方がないとあきらめています。しかし、たとえ文が終わっていなくても、行末に必ず改行を入れる人もいます。これが最悪のケースです。
ブログなどでも多くの人が、行末改行方式の文章を書いています。ひどい人は、文末に改行を入れた上に、さらに 1 行を空けて次の行に移っています。たとえば、こんな具合です。
私は英日翻訳と日英翻訳のどちらにも行っています。
どちらにもそれぞれの難しさがあり、一概にどちらのほうが難しいとは言えません。
日英翻訳において出来上がりの品質に最も大きな影響を与える
要素は何でしょうか。
内容の難易度でしょうか。もちろん内容が難しいかどうかも翻訳の品質に影響を
与えますが、それよりも重要な要素は原稿の質です。
論理的にわかりやすく明確に書かれていれば、多少内容が難しくてもそれほど
翻訳しにくいということはありません。
ブログを書いている一般の人にまでケチを付ける気はありませんが、このような書き方をする人たちは、ほかの人にも自分と同じように見えていると思っているのでしょう。しかし、Web
上の文章(テキスト)は、ブラウザや PC の設定など、見ている人の環境によって見え方が異なります。ほかの人の
PC で表示した場合でも、同じ箇所で改行されているとは限らないのです。また、行間を広くとりたいのであれば、スタイルで行間を指定します。改行で行間を広くするのは間違ったやり方です(これは
PC 講座ではありませんので、これくらいにしておきますが・・・)。どちらにもそれぞれの難しさがあり、一概にどちらのほうが難しいとは言えません。
日英翻訳において出来上がりの品質に最も大きな影響を与える
要素は何でしょうか。
内容の難易度でしょうか。もちろん内容が難しいかどうかも翻訳の品質に影響を
与えますが、それよりも重要な要素は原稿の質です。
論理的にわかりやすく明確に書かれていれば、多少内容が難しくてもそれほど
翻訳しにくいということはありません。
閑話休題。さらに、困るのが行末に改行を入れた上に、次の行の先頭に空白を入れて字下げしている人です(字下げはインデントで行ってください)。日本語を英語に訳した場合、1 行の長さが同じになるなんてことはありえません。したがって、レイアウトが崩れ、翻訳者がインデントまで設定することになります。
このような現象が起こるのは、文章を書くことに慣れていない技術者が原稿を書いているケースが多いという理由も多少はあるのかもしれません。今後は段落に基づいた文章を書くことを学校でもっと教えるべきだと思います。日本人ならほとんどの人が九九を言えるように、文章を書くときは段落に分けて書くということが常識になる日が来ることを切望します。
原稿の質という観点からは少しずれるかもしれませんが、もう 1 つ嫌いな原稿のタイプがあります。それは Excel を使った原稿です。Excel での翻訳上書き作業はとてもやりくく、作業効率もきわめて悪いため、私は Word にコピーして Word 上で翻訳作業行うことにしています。そして、最後に完成した訳文を Excel にコピーし直しています。とても手間がかかる作業です。
原稿作成者にお願いです。Excel でなければならない原稿であれば仕方ないと思いますが、Excel を単なる表として使いただけなのであれば、ぜひ Word で表を作成しください。そのようにしていただけると大変うれしく思う翻訳者は私だけではないはずです。
カテゴリー: 6. 翻訳全般
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