コラム 41: 日常会話くらいなら
英語力(外国語力)について言う際、「日常会話くらいは」という表現がよく使われます。しかし、私は以前から「日常会話ほど難しいものはない」と思っています。話す相手にもよりますが、実際の日常的な会話では、政治や経済の話題を含め、世間を騒がせているさまざま出来事やニュースから身の回りのことまで、実にいろいろなことが話題になります。さらにやっかいなことに、日常会話にはジョークも入り混じります。
サラリーマン時代に海外に出張した際、客との商談においてはほとんど問題なくコミュニケーションできたのですが、大変だったのが食事のときの会話でした。スラングやニュアンスがつかみにくい簡単な単語を組み合わせた表現などを織り交ぜてネイティブが早口で話す英語は理解するのが困難でした。まじめな話をしている最中に、周りの人がどっと笑ったりすると、おそらくジョークを言ったのだろうということはわかっても、何がおもしろいのかよくわからないという経験もよくしました。
英語には、アングロサクソン系の表現とラテン系の表現があります。アングロサクソン系の英語は、日本語で言えばやまとことばに相当します。ラテン系の英語は外国語に由来することばで、日本語で言えば漢語に相当します(アングロサクソン系とラテン系については、『続 日本人の英語』(マイク・ピータンセン著) で詳しく解説されています)。
日本人は、ラテン系の英単語は得意ですが、アングロサクソン系の英語は苦手です。たとえば、to vomit(嘔吐する)という単語は知っていても、to throw up(吐く、戻す)という表現は知らなかったりします。to vomit はどちらかと言うと専門的で固い表現ですが、意味が限定的で細かいニュアンスを気にする必要もないため、日本人にはわかりやすいのだと思います。これに対して、アングロサクソン系の to throw up は、「吐く」以外にも多くの意味があり、さまざまな場面で使われます。また、up の代わりに out や off を組み合わせることで別の意味になったり、ニュアンスが変わったりします。これが、日本人がアングロサクソン系の英語が苦手な理由だと思います。会話では、当然アングロサクソン系の英語が多く使われます。これも、「日常会話が難しい」理由の 1 つだと思われます。
アングロサクソン系とラテン系の英語の例をほかにもいくつか挙げておきます。
提出する
アングロサクソン系: turn in
ラテン系: submit
考え直す
アングロサクソン系: think (it) over (again)
ラテン系: reconsider
要求する
アングロサクソン系: call for
ラテン系: require
翻訳についても、同じことが言えます。Hexavalent chromium(六価クロム)とか oscillation source(加振源)といった、なじみのない単語が出てくる技術文書は一見難しそうですが、内容さえ理解できれば、細かいニュアンスや訳語に頭を悩ませたりするとがないため、翻訳に苦労することはそれほどありません。むしろ、口語や会話文が頻出する文章のほうが私は難しく感じます。以前、ゲームの台詞を訳したことがありますが、細かいニュアンスや掛けことばを理解するのにとても苦労しました。
もし、面接などで自分の英語力について質問される機会があれば、私なら「ビジネスでのやり取りくらいなら」と答えるでしょう。
カテゴリー: 4. 英語全般
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サラリーマン時代に海外に出張した際、客との商談においてはほとんど問題なくコミュニケーションできたのですが、大変だったのが食事のときの会話でした。スラングやニュアンスがつかみにくい簡単な単語を組み合わせた表現などを織り交ぜてネイティブが早口で話す英語は理解するのが困難でした。まじめな話をしている最中に、周りの人がどっと笑ったりすると、おそらくジョークを言ったのだろうということはわかっても、何がおもしろいのかよくわからないという経験もよくしました。
英語には、アングロサクソン系の表現とラテン系の表現があります。アングロサクソン系の英語は、日本語で言えばやまとことばに相当します。ラテン系の英語は外国語に由来することばで、日本語で言えば漢語に相当します(アングロサクソン系とラテン系については、『続 日本人の英語』(マイク・ピータンセン著) で詳しく解説されています)。
日本人は、ラテン系の英単語は得意ですが、アングロサクソン系の英語は苦手です。たとえば、to vomit(嘔吐する)という単語は知っていても、to throw up(吐く、戻す)という表現は知らなかったりします。to vomit はどちらかと言うと専門的で固い表現ですが、意味が限定的で細かいニュアンスを気にする必要もないため、日本人にはわかりやすいのだと思います。これに対して、アングロサクソン系の to throw up は、「吐く」以外にも多くの意味があり、さまざまな場面で使われます。また、up の代わりに out や off を組み合わせることで別の意味になったり、ニュアンスが変わったりします。これが、日本人がアングロサクソン系の英語が苦手な理由だと思います。会話では、当然アングロサクソン系の英語が多く使われます。これも、「日常会話が難しい」理由の 1 つだと思われます。
アングロサクソン系とラテン系の英語の例をほかにもいくつか挙げておきます。
提出する
アングロサクソン系: turn in
ラテン系: submit
考え直す
アングロサクソン系: think (it) over (again)
ラテン系: reconsider
要求する
アングロサクソン系: call for
ラテン系: require
翻訳についても、同じことが言えます。Hexavalent chromium(六価クロム)とか oscillation source(加振源)といった、なじみのない単語が出てくる技術文書は一見難しそうですが、内容さえ理解できれば、細かいニュアンスや訳語に頭を悩ませたりするとがないため、翻訳に苦労することはそれほどありません。むしろ、口語や会話文が頻出する文章のほうが私は難しく感じます。以前、ゲームの台詞を訳したことがありますが、細かいニュアンスや掛けことばを理解するのにとても苦労しました。
もし、面接などで自分の英語力について質問される機会があれば、私なら「ビジネスでのやり取りくらいなら」と答えるでしょう。
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カテゴリー: 4. 英語全般
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