コラム15: 英語の発想、日本語の発想
同じ情報を伝える場合でも、英語と日本語では発想がまったく異なる場合があります。
ソース言語の発想をそのままターゲット言語に持ち込むと、たとえ文法的に正しくても、違和感を与える変な英語や日本語になってしまいます。
翻訳を行なう際は、語句を置き換えるだけでなく、ターゲット言語らしい発想に基づいた文章になっているかどうかにも注意する必要があります。
状態か動作か
日本語では動作に重点を置くのに対して、英語では状態に重点を置いた表現になるケースがあります。
例文 1
可動部には手を近づけないでください。
日本語では、「手を近づける」という動作に重点を置いています。この日本語の発想をそのまま英語に持ち込んで
Do not bring your your hands close to the moving parts.
などとすると、文法的には正しくても変な英語になってしまいます。「現在の状態を維持する」ことに重点を置いた英語の発想に基づいた英語らしい表現は
Keep your hands away from the moving parts.
(可動部から手が離れた状態を維持してください)
となります。立ち入り禁止(Keep out、keep off 〜)も、これとよく似た例です。
例文 2
この研究をするために日本に来ました。
日本語では「来た」という動作(変化)に重点を置きますが、英語では「(現在)いる」という状態に重点をおいて、次のように表現します。
I am in Japan to study this matter.
(この研究をするために日本にいます)
例文 3
これで装置を使用できるようになりました(使用準備が整いました)。
Now the device is ready for use.
I'll be back soon(すぐに戻る)なども状態に重点を置いた表現の例です。
例文 1
可動部には手を近づけないでください。
日本語では、「手を近づける」という動作に重点を置いています。この日本語の発想をそのまま英語に持ち込んで
Do not bring your your hands close to the moving parts.
などとすると、文法的には正しくても変な英語になってしまいます。「現在の状態を維持する」ことに重点を置いた英語の発想に基づいた英語らしい表現は
Keep your hands away from the moving parts.
(可動部から手が離れた状態を維持してください)
となります。立ち入り禁止(Keep out、keep off 〜)も、これとよく似た例です。
例文 2
この研究をするために日本に来ました。
日本語では「来た」という動作(変化)に重点を置きますが、英語では「(現在)いる」という状態に重点をおいて、次のように表現します。
I am in Japan to study this matter.
(この研究をするために日本にいます)
例文 3
これで装置を使用できるようになりました(使用準備が整いました)。
Now the device is ready for use.
I'll be back soon(すぐに戻る)なども状態に重点を置いた表現の例です。
「〜する人」か「〜する場合」か
driver や operator など、er や or を付けると「〜する人」「するもの」という意味になります。しかし、英語のこの「〜する人」という発想も日本語にそのまま持ち込むと変な日本語になってしまうことがあります。「〜する人」という発想は、日本語では「〜する場合」という発想になるケースが多いと思います。
例文 1
Drivers should be careful on rainy days.
英語の発想をそのまま持ち込んだ訳文
ドライバーは、雨の日は気を付けてください。
日本語の発想に基づいた日本語らしい訳文
雨の日に運転する場合は、気を付けてください。
user などは、そのまま「ユーザー」と訳すことが多いのですが、そのまま「ユーザー」と訳すと変な日本語になる場合もあります。
例文
The users of the device must carefully read the instruction manual before using it.
英語の発想をそのまま持ち込んだ訳文
この装置のユーザーは、マニュアルをよく読んでから機械を使用してください。
日本語の発想に基づいた日本語らしい訳文
この装置を使用する場合は、マニュアルをよく読んでから使用してください。
(この装置を使用する場合は、事前にマニュアルをよく読んでください)
例文 1
Drivers should be careful on rainy days.
英語の発想をそのまま持ち込んだ訳文
ドライバーは、雨の日は気を付けてください。
日本語の発想に基づいた日本語らしい訳文
雨の日に運転する場合は、気を付けてください。
user などは、そのまま「ユーザー」と訳すことが多いのですが、そのまま「ユーザー」と訳すと変な日本語になる場合もあります。
例文
The users of the device must carefully read the instruction manual before using it.
英語の発想をそのまま持ち込んだ訳文
この装置のユーザーは、マニュアルをよく読んでから機械を使用してください。
日本語の発想に基づいた日本語らしい訳文
この装置を使用する場合は、マニュアルをよく読んでから使用してください。
(この装置を使用する場合は、事前にマニュアルをよく読んでください)
「〜は〜をします」 と 「〜には〜があります」
日本語の表現の最大の特徴の 1 つとして、「〜があります」という表現が挙げられると思います。とにかく、日本語では「〜があります」という表現が頻出します。 ところが、この「〜があります」表現は、英語では単純に「〜は〜します」という発想で表すことが多いような気がします。
例文 1
この素材には、水を通す特性があります。
「特性があります」という表現はきわめて日本語的です。日本語の発想につられて、
The material has a property of allowing water to pass through it.
などと訳す人が多いのですが、この表現は英語としては冗長です。「〜があります」発想を捨てて、もっと単純に「〜は〜します」という発想にすると英語らしくなります。
The material allows water to pass through it.
(この素材は水を通します)
例文 2
The device can detect high-speed neutrons.
直訳すると、
この装置は高速中性子を検出できます
となりますが、日本語として違和感があります。例文 1 とは逆に、「〜があります」発想に書き換えると日本語らしい文章になります。
この装置には、高速中性子を検出する機能があります。
A does B や A can do B という英文を訳す際、「A は B をします」や「A は B をできます」ではなく、「A には B をする〜があります」という日本語で表現できないかと考えてみるくせを付けると、日本語らしい訳文を生み出せることがあります。
例文 1
この素材には、水を通す特性があります。
「特性があります」という表現はきわめて日本語的です。日本語の発想につられて、
The material has a property of allowing water to pass through it.
などと訳す人が多いのですが、この表現は英語としては冗長です。「〜があります」発想を捨てて、もっと単純に「〜は〜します」という発想にすると英語らしくなります。
The material allows water to pass through it.
(この素材は水を通します)
例文 2
The device can detect high-speed neutrons.
直訳すると、
この装置は高速中性子を検出できます
となりますが、日本語として違和感があります。例文 1 とは逆に、「〜があります」発想に書き換えると日本語らしい文章になります。
この装置には、高速中性子を検出する機能があります。
A does B や A can do B という英文を訳す際、「A は B をします」や「A は B をできます」ではなく、「A には B をする〜があります」という日本語で表現できないかと考えてみるくせを付けると、日本語らしい訳文を生み出せることがあります。
肯定か否定か
英語では肯定で表現するケースでも、日本語では否定で表現したほうが自然な場合があります。
例文 1
Only the authorized distributors can sell this product.
英語では「〜のみが〜できる」という肯定表現になっていますが、日本語では「〜しか〜できない」や「〜以外は〜できない」など、「否定」表現にしたほうが日本語らしくります。
日本語の発想に基づいた訳文
この商品は正規販売店以外は販売できません。
正規販売店しかこの商品を販売できません。
もちろん、「正規販売店のみこの商品を販売できます」という肯定表現でも、日本語としておかしいというわけではないのですが、否定表現のほうが本来の日本語の発想ではないかと Kunishiro は思います。
重要なことは、「この商品は正規販売店以外は販売できません」という日本語を英訳するときに、Only 〜 can という肯定文にできるかということです。
例文 2
If deccreased performance of any kind has been detected, do not continue to use the product.
今度は、英語では否定表現でも、日本語では肯定で表現したほうがしっくりくるケースです。
訳例
何らかの性能低下を感じた場合は、製品の使用を中止してください。
「製品を使い続けないでください」と訳しても、文法的におかしいところもなく意味も通じますが、違和感を与える日本語になってしまいます。
カテゴリー: 2. 英語と日本語の違い
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例文 1
Only the authorized distributors can sell this product.
英語では「〜のみが〜できる」という肯定表現になっていますが、日本語では「〜しか〜できない」や「〜以外は〜できない」など、「否定」表現にしたほうが日本語らしくります。
日本語の発想に基づいた訳文
この商品は正規販売店以外は販売できません。
正規販売店しかこの商品を販売できません。
もちろん、「正規販売店のみこの商品を販売できます」という肯定表現でも、日本語としておかしいというわけではないのですが、否定表現のほうが本来の日本語の発想ではないかと Kunishiro は思います。
重要なことは、「この商品は正規販売店以外は販売できません」という日本語を英訳するときに、Only 〜 can という肯定文にできるかということです。
例文 2
If deccreased performance of any kind has been detected, do not continue to use the product.
今度は、英語では否定表現でも、日本語では肯定で表現したほうがしっくりくるケースです。
訳例
何らかの性能低下を感じた場合は、製品の使用を中止してください。
「製品を使い続けないでください」と訳しても、文法的におかしいところもなく意味も通じますが、違和感を与える日本語になってしまいます。
カテゴリー: 2. 英語と日本語の違い
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