コラム 32: 日本語では共通項を繰り返し、英語ではなるべく省略する
英語と日本語にはさまざまな違いがあります。英語では共通の単語を 1 回しか使わない、日本語では共通の単語を繰り返すという特徴もその 1 つです。
たとえば、treatment and control rooms という英語は、どのような日本語に訳すのが適当でしょうか。「治療と制御室」と訳してしまうと誤解を与える可能性が高くなります。誤解を与えないようにするには、「治療室と制御室」と訳します。つまり、英語では、「treatment room and control room 」の共通項である room という単語を 1 回で済ましているのに対して、日本語では共通項の「室」を繰り返さないと正確な意味が伝わらないということです。
これは、数学で習った因数分解と展開のような関係に似ていると思います。つまり、英語では因数分解的な表現、日本語では展開的な表現が好まれるということです。
英語は因数分解式表現: (a + b + c) * x
日本語は展開式表現: ax + bx + cx
英語:(treatment + control) x rooms = 日本語: 治療室 + 制御室
ここでポイントは共通項である room が rooms と複数形になっていることです。rooms と複数形になっていることで、この room が treatment と control の共通項であることがわかります。ちなみに、「treatment and the control room」 = 「治療と制御室」、「treatment and control rooms 」 = 「治療と各制御室」となりますので、きちんと区別しましょう。
誤解を与えない訳し方の例をほかにもいくつか挙げておきます。
例 1
英文: This application provides billing, scheduling, and email functions.
訳例 1 : このアプリケーションには、請求書作成機能、スケジュール作成機能、電子メール機能が備わっています。
機能を繰り返したくない場合は、以下のような訳し方もあります。
訳例 2: このアプリケーションには、請求書作成、スケジュール作成、電子メールの各機能が備わっています。
例 2
英文: You must check temeperature and humidity control systems.
訳例 1: 温度制御システムと湿度制御システムを確認してください。
訳例 2: 温度と湿度の両方の制御システムを確認してください。
誤解を与える、好ましくない訳: 温度と湿度制御システムを確認してください(温度を確認するのか、温度制御システムを確認するのか不明確)。
次のようなケースでも、共通項を繰り返したほうがわかりやすくなると思います。
英文: You cannot enter a value that exceeds the available space, that is beyond the file system’s limitations, or that is not large enough to contain the data held in the source partition.
訳例: 空き容量を超える値、ファイルシステムの制限を越える値、コピー元のパーティションのデータを十分に格納できるサイズに満たない値は入力できません。
英語から日本語への翻訳を中心に見てきましたが、日本語から英語に訳す場合は、逆に共通項を繰り返さずに 1 回で済ますようにすると、英語らしい英語になります。
例 1
原文: このシステムを利用するには、圧力計と空気流量計が必要です。
訳例: This system requires pressure and air flow indicators.
例 2
原文: この店では紳士服と婦人服の両方を扱っています。
訳例: This store carries both men's and ladies' wear.
原文の日本語で「服」が繰り返されているからといって、「men's wear and ladies' wear」 としないようにしましょう。
カテゴリー: 2. 英語と日本語の違い
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たとえば、treatment and control rooms という英語は、どのような日本語に訳すのが適当でしょうか。「治療と制御室」と訳してしまうと誤解を与える可能性が高くなります。誤解を与えないようにするには、「治療室と制御室」と訳します。つまり、英語では、「treatment room and control room 」の共通項である room という単語を 1 回で済ましているのに対して、日本語では共通項の「室」を繰り返さないと正確な意味が伝わらないということです。
これは、数学で習った因数分解と展開のような関係に似ていると思います。つまり、英語では因数分解的な表現、日本語では展開的な表現が好まれるということです。
英語は因数分解式表現: (a + b + c) * x
日本語は展開式表現: ax + bx + cx
英語:(treatment + control) x rooms = 日本語: 治療室 + 制御室
ここでポイントは共通項である room が rooms と複数形になっていることです。rooms と複数形になっていることで、この room が treatment と control の共通項であることがわかります。ちなみに、「treatment and the control room」 = 「治療と制御室」、「treatment and control rooms 」 = 「治療と各制御室」となりますので、きちんと区別しましょう。
誤解を与えない訳し方の例をほかにもいくつか挙げておきます。
例 1
英文: This application provides billing, scheduling, and email functions.
訳例 1 : このアプリケーションには、請求書作成機能、スケジュール作成機能、電子メール機能が備わっています。
機能を繰り返したくない場合は、以下のような訳し方もあります。
訳例 2: このアプリケーションには、請求書作成、スケジュール作成、電子メールの各機能が備わっています。
例 2
英文: You must check temeperature and humidity control systems.
訳例 1: 温度制御システムと湿度制御システムを確認してください。
訳例 2: 温度と湿度の両方の制御システムを確認してください。
誤解を与える、好ましくない訳: 温度と湿度制御システムを確認してください(温度を確認するのか、温度制御システムを確認するのか不明確)。
次のようなケースでも、共通項を繰り返したほうがわかりやすくなると思います。
英文: You cannot enter a value that exceeds the available space, that is beyond the file system’s limitations, or that is not large enough to contain the data held in the source partition.
訳例: 空き容量を超える値、ファイルシステムの制限を越える値、コピー元のパーティションのデータを十分に格納できるサイズに満たない値は入力できません。
英語から日本語への翻訳を中心に見てきましたが、日本語から英語に訳す場合は、逆に共通項を繰り返さずに 1 回で済ますようにすると、英語らしい英語になります。
例 1
原文: このシステムを利用するには、圧力計と空気流量計が必要です。
訳例: This system requires pressure and air flow indicators.
例 2
原文: この店では紳士服と婦人服の両方を扱っています。
訳例: This store carries both men's and ladies' wear.
原文の日本語で「服」が繰り返されているからといって、「men's wear and ladies' wear」 としないようにしましょう。
カテゴリー: 2. 英語と日本語の違い
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